第10話(後半)

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 どれほどの勇気を振り絞って伝えてくれたんだろう。  苦しいのは、つらいのは、自分だけだと思っていた。 「ごめん、……新」  呟きとともに、理宇の瞳から雫が流れた。  すぐに同じ想いを返せなかった自分を、激しく後悔する。  テーパードパンツのポケットからスマホを取り出した。   今すぐにでも、新に自分の気持ちを伝える。  そう思って液晶をタップした理宇の手は、通話履歴の画面を開いたところで止まった。 『理宇は、誰からも好かれるし、いろんな出会いもあるだろうし』  新の言葉が、頭の中で反響する。 『俺のこと弟みたいにしか思ってないのはわかってる。困らせてごめん』  きっと新は、自分のことを勘違いしている。  だけどそれは、理宇がそう思われたくて自分を偽り続けた結果だ。  新の前では、ことあるごとに兄貴ぶって、経験もないのに訳知り顔で余裕ぶってきた。  一番になれないのなら、なんでも受け止めてやれるような、自分だけにはなんでも話せるような、そんな存在になりたかったからだ。
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