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「理宇、どうかした? 具合悪い?」
羞恥心や自己嫌悪で歪めていた顔を、新が覗き込む。
「あ……」
心配そうな眼差しに、罪悪感が疼いて仕方ない。
新の顔をまともに見られなかった。
穢れを知らない新を、汚してしまったような気がした。
「いや、ごめん。平気、なんでもない」
ぐちゃぐちゃの内心を隠すように笑ったけど、上手にできていなかったのか、新の顔は納得した風には見えない。
「早く帰ろう。今日気温高いし、熱中症かもしれない」
掴んだままだった理宇の腕を引いて新が歩き出す。
大丈夫だから手を離してくれと言いかけて、理宇は唇を閉ざした。
離してほしくないと思った。
手首に触れる指から、新の体温が伝わる。
自分でもよくわからないけど、泣き出してしまいそうになった。
胸が痛くて、寂しくて、苦しい。
筋肉がつき始めた新の背中に、抱きつきたくてたまらなくなる。
新が好きだ。
今でも十分特別な存在なのに、もっと近い場所にいきたくなる。
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