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新が好きで、どうしようもなくて、他には何もなくて。そんな自分が顔を出さないように、必死に兄だと言い聞かせてきた。
本当の理宇は、真摯に想いを伝えてくれた新を前にして、パニックになってすごすごと逃げるような情けない人間なのに。
「ありえない、よな……ほんと」
雪哉が呆れて、突き放すのも当然だと思った。
そんな自分を知っても、果たして新は好きなままでいてくれるだろうか。
画面を開いたまま、どうしてもそれ以上タップできなかった。
「……っ、……ぅ」
視界が白く歪んで、嗚咽が漏れる。
とてつもなく、怖かった。
自分が逃げたことによって、現在進行形で新を傷つけているのもわかっていたのに、怖くてそれ以上進めない。
理宇が答えを出したら、新に好きだと言ったら、自分たちはいったいどうなってしまうのだろう。
これまで必死に守ってきた関係が変わってしまったら、果たして理宇は自分の形を保っていられるのか。
幼なじみじゃない、弟じゃない新を、想像できない。
その全部が怖くてたまらなくて、目の前が真っ暗だ。
「さい、あく……結局、自分のことばっか、じゃん」
力の入らなくなった指先から、スマホが滑り落ちる。
重力に従って項垂れて、マットレスの上で身体を丸めた。
(ごめん、新……ごめんな)
声を上げて泣きながら、理宇は何度も新に謝罪をした。
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