第11話(前半)

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  ◇  ◇  ◇  次の休みまでには、絶対に新に連絡を入れる。  ぐるぐると思い悩むなかでも、理宇は自分にそう言い聞かせていた。  だけど、その期限である水曜日を迎えても、依然連絡できないままだ。  ここ数日、寝つきが悪く、眠りも浅いせいか、休みの日であれば昼過ぎまでは寝ている理宇が、8時過ぎには起き出した。  食欲もずっとわかなくて、朝食と昼食代わりにぬるいカフェオレを飲む。  部屋にこもっていると自己嫌悪で余計にドツボにはまりそうで、特に目的もなく外に出た。  ロードバイクには乗らず、徒歩で駅まで歩く。  切符売り場の路線図をぼんやり眺めているうちに、ふと思い立ってスマホを取り出してネット検索をした。  私鉄に乗って新宿まで出たあと、中央線に乗り換えようか迷ったが、構内を出る。スマホに表示されたマップを頼りに徒歩で進んだ。  少し迷って、結局目的地に着くのに1時間以上掛かった。 「……でか」  正確にはまだ辿り着いたわけではない。けれど今理宇が進んでいる遊歩道からでも、すでにその建物が見えている。
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