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新と自分とではまるで釣り合わない。
新にはもっと相応しい人間がいるはずだ。
そんな要素を1つでも多く見繕って、新から逃げる理由にしようとしている。
新との関係を変えるのが怖いから。
自分に自信がないから。
こんな自分を隠し通しさえすれば、新に嫌われることはないから。
新に自分の本心を伝えなくてはと思う反面で、伝えないままでいれば、これまで通りでいられるかもしれないと期待をする。
「……やっぱ最悪じゃん」
もしも、このまま新への連絡を先送りにすれば、新の髪は誰がカットするのだろうか。
前回カットしたのはもうひと月前だから、スタイルを保つには調整が必要な時期に差し掛かっている。
新に手入れの行き届いていない髪でなんていさせたくない。
だけど、他の人間に触らせるのは絶対嫌だ。
それでもまだ、新にどう言えばいいのかわからないし、会うのが怖い。
(超絶ヘタレの自己中野郎。自分でもヒくわ)
自分を脳内で散々こき下ろしてから、理宇は立ち上がり、力ない足取りでビルの外へと歩き始めた。
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