第11話(前半)

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『ごめん。  多分今、理宇はすごい困ってるよね。  本当にごめん。  あんなこと言ったけど、俺の一番の望みは、これまでみたいに理宇とずっと一緒にいられること。  だから、理宇さえよかったら全部忘れて。  これからも、俺のお兄ちゃんで、親友で、専属スタイリストでいてほしい。  今度会う時は、ちゃんと弟でいるから安心して。』  メッセージを読んで、一瞬ほっとしかけた自分に気付いて、寒気がした。 (そうじゃないだろ、バカ!)  反射的にスマホを持っていない方の右手で、自らの頬を打つ。暗い部屋の中、乾いた音が響き、生理的な涙が滲む。  新は、いったいどんな気持ちでこの文章を打ったのか。  震えながら、それでも伝えられた感情を、全部忘れていいはずがないのに。  弟だと言われるたび、新がどんな気持ちを抱いたのか、今の理宇ならわかる。  もどかしくて、悔しくて、ものすごく苦しかったはずだ。  それなのに理宇は、自分の都合で必要以上に新を弟扱いしてきた。  そして今、そんな新に、「ちゃんと弟でいるから」と言わせてしまった。
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