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「一番の望みは、ずっと一緒にいられること」
新のくれた言葉を、なぞるように口に出してみる。
それを叶えるためには、やっぱり「このまま」がいいのかもしれない。
だって、「今まで」を壊すのは怖い。
弱気な自分が、また逃げる理由を必死にかき集め始めるのを感じて、理宇は再び右手を頬に振るった。さっきよりも強く。
(お前、あの倉木新に惚れられた男だぞ! 最強じゃん!)
自分に自信はなくても、新を好きな気持ちだけは誰にも負けるわけがない。
これからのことは、どうなるかわからない。
自分がこの先、本当に新を幸せにできるのかも。
だけど、今夜の新を悲しみから救い出して、抱き締めることなら絶対にできる。
理宇はスマホをタップしかけて、すぐにそれをポケットに突っ込む。
そのまま玄関に向かって部屋を飛び出し、駅へとひた走った。
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