第11話(前半)

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「一番の望みは、ずっと一緒にいられること」  新のくれた言葉を、なぞるように口に出してみる。  それを叶えるためには、やっぱり「このまま」がいいのかもしれない。  だって、「今まで」を壊すのは怖い。  弱気な自分が、また逃げる理由を必死にかき集め始めるのを感じて、理宇は再び右手を頬に振るった。さっきよりも強く。 (お前、あの倉木新に惚れられた男だぞ! 最強じゃん!)  自分に自信はなくても、新を好きな気持ちだけは誰にも負けるわけがない。  これからのことは、どうなるかわからない。  自分がこの先、本当に新を幸せにできるのかも。  だけど、今夜の新を悲しみから救い出して、抱き締めることなら絶対にできる。  理宇はスマホをタップしかけて、すぐにそれをポケットに突っ込む。  そのまま玄関に向かって部屋を飛び出し、駅へとひた走った。
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