第11話(中)

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  ◇  ◇  ◇  解錠されたオートロックの扉をくぐって、エレベーターで3階に上がる。突き当りの部屋の前まで行きインターホンを押すと、扉はすぐに開かれた。  新は会社から帰ったばかりなのか、まだスーツ姿だった。  たった数日顔を見ていないだけなのに、少しやつれた印象がする。ちゃんと眠れていないのか、目の下にうっすらクマがあった。  新を傷付けて苦しませた事実を目の当たりにして、口の中に苦いものが広がった。それが顔に出ていたからか、新が悲しそうに顔をしかめる。 「とりあえず上がって」  サンダルも脱がずに玄関に立ち尽くしていた理宇に、新が声を掛ける。先を歩く背中がいつもよりずっと頼りなく見えて、理宇はリビングに移動する途中で足を止めて声を掛けた。 「ほんとにごめん、遅くなって」  新が立ち止まり、ゆっくりと振り向く。 「理宇が謝ることじゃない。俺が勝手に……」 「違う……ほんとに、俺が悪くて」  言わなければと思うのに、言葉がなかなか形にならない。  心臓が鳴り過ぎて息がしづらいし、手も足も震えている。 (すごいな、新は。こんなのに耐えて、それでも好きだって伝えてくれたんだから)  理宇の気持ちを知らない分、きっと理宇の何十倍、何百倍も怖かったはずだ。  そんな真摯な新の気持ちに、今度こそちゃんと応えたかった。
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