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新の指先が涙で汚れた理宇の目元を拭って、赤くなっているであろう鼻をからかうようにつついた。そのあと頬を撫でるように包んで、親指が唇の端に触れる。
「キス、やり直してもいい?」
理宇の心臓と肩が跳ねる。
おろおろと視線をさまよわせたあと、じっと見つめてくる新の視線とかち合って硬直する。
「う、うん……」
理宇がぎこちなく頷くと、腰に新の腕が回る。
どうすればいいのかわからず息も動きも止めていると、ゆっくり近づいてくる超絶綺麗な顔が、自然な流れで瞼を伏せた。
(あ、そうか。キスって目ぇつぶるんだ)
慌てて目を閉じたと同時に、唇に柔らかい感触が触れる。数秒しっとりと覆われたあと、すぐに少しだけ離れた。
「理宇、力抜いて。普通に息してて平気だから」
理宇の強張りが伝わったのか、新の手のひらが身体をほぐすように撫でてくる。
理宇はきつく目をつぶったまま頷き、言われた通りに実行しようとした。
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