第11話(下)

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第11話(下)

 理宇をそっとソファに座らせたあと、その隣に新が座る。 まだせわしない心音を感じながら、新の様子を確かめようとした瞬間、盛大な溜息が聞こえた。  肩幅に開いた足の上に肘をつき、両手で口元を覆う新は、真正面にあるテレビを向いている。 「新?」  呼びかけると、再び長い息が聞こえた。 「ごめん、一旦冷静になったら、色々心が追い付かなくて」  新は言ったそばから、「心? ちがう、頭?」と困惑したような独り言を呟く。 「さっきは、もう無我夢中だったから」  そう言ってようやく新は理宇の方を向いた。  申告通り、まるで理宇に助けを求めるみたいに困った顔をしている。 「いまだに信じられない。だって、まさか理宇が……」  途切れた言葉の代わりに、再びの溜息。 「ごめん。引いたよな」  理宇は居た堪れなさを誤魔化すように頭を掻いた。 「いい年して、なんていうか、そういう経験がないとかさ。……挙句腰抜かすし」  さっきの醜態、そして、これまで散々新にしてきた知ったかぶりの数々を思い出しながら、「カッコ悪すぎ」と自虐の笑みを浮かべる。  すると、新は目を見開いて、飛びつくように理宇の肩に触れた。
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