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「理宇、お腹空いてない?」
両肩に触れた新の手が、やんわりと理宇の身体を押した。
部屋の時計は20時過ぎを指している。
「おなか……」
考えてみると、今日は食事と呼べる食事をとっていない。
そもそも、ここ最近はまともに食べる気力がなく、仕事の休憩時間におにぎりを一、二個放り込む程度で済ませていた。
だけど理宇は今、違う理由で食欲を感じない。
「空いてる、とは思うんだけど、なんていうか胸いっぱいな感じで食欲ない」
「俺と同じだ」
控えめに笑う新の反応が嬉しくて、理宇も笑顔を返した。
「あ、でも、何か食べた方がいいよな。どっか食べにいく? 食べ物見たら、食欲湧くかも。あ、でも新は仕事で疲れてるだろうし、明日も仕事だし、なんか買うかデリバリーで……」
そこまで矢継ぎ早に話して、理宇ははたと口を噤んだ。
「理宇?」
唐突に話しをやめた理宇に、新が不思議そうな顔をする。
理宇は少し迷ってから、再び唇を開いた。
「正直、メシとかどうでもよくて、けど今俺、新ともうちょっと一緒にいられる理由必死に探してて……」
言ってもいいのだろうかという迷いを漂わせながら、理宇は思っていることをそのまま言葉にしていく。
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