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「でもさ、もう理由とかなくてもいいんだよなって、ふって思って。用事で会ったついでにメシとか、部屋が水浸しだから泊まるとか、そういう理由がなくても、一緒にいたいからってだけで新と一緒にいてもいいんだよな?」
新に気持ちを知られないように気を付けるのが癖になっていて、ストレートに本心を口にするのは抵抗があった。
自信なさげに理宇が問い掛けたら、新は一瞬泣きそうな顔をしたあと心底嬉しそうに笑った。
「うん、一緒にいたいだけ、一緒にいよう」
その笑顔に理宇はほっとして、入っていた身体の力を抜いた。
「……そんなこと言ったら、入り浸っちゃうぞ、俺」
「それを言うなら俺は、一緒に住みたい」
不意に真剣さを滲ませた新に、理宇は「う」と呻いて固まる。
幼なじみとしてひと月暮らしただけであんなに刺激が強かったのに、両想いだと自覚して一緒に住むなんて、今の理宇には想像すらできない。
そんな理宇の心情を察した新は、表情を崩して理宇の指先を握った。
「ゆっくりでいいから。ちょっとずつ考えてみて」
優しい声で告げられて、理宇は緩慢な動きで頷いた。
「でも今夜は泊まっていって。理宇と一緒にいたいから」
ぎゅっと指先に力を込められて、理宇は肩を竦ませる。
声と、理宇を見つめる新の目に、今までにはなかった甘さと熱を感じてひどく緊張した。
それでも一緒にいたい気持ちは理宇も同じだったから、「うん、泊まる」と返事をする。
声が掠れたのが、恥ずかしいと思ったけど、新が嬉しそうに笑ってくれたのですぐにどうでもよくなった。
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