714人が本棚に入れています
本棚に追加
/416ページ
第12話
普段は目覚ましを掛けないと起床できない理宇が、この朝は自然とまぶたを開いた。
ぼんやりしていた視界が徐々にくっきりしてくる。
「おはよう、理宇」
声を掛けられても、起き切っていない頭のせいで現状がうまく把握できない。
「まだ寝ぼけてる? いつも起きる時間より、ちょっと早いもんね」
間近にある新の顔がふわりと微笑む。その眩しさに理宇の意識は一気に覚醒した。
「っ」
心の準備なしの新の微笑は刺激が強すぎる。反射的にのけぞった理宇へと、新が咄嗟に手を伸ばした。
「後ろ危ないから」
それ以上身体が後ろに行かないように、理宇の背を自分の方へと引く。まるで抱き寄せるみたいな仕草に、理宇は息を止めて硬直した。
そんな理宇の反応に、新の表情が曇る。
「昨日の、夢じゃないよね?」
不安げにじっと見てくる新の瞳に、昨夜の出来事がよみがえった。
やっと新に本当の気持ちを伝えて、思いが通じ合って。そしてその後の……ハグやキス。
理宇は顔が火照るのを感じながら、「じゃない」と弱々しい声で答えた。
「……よかった」
ほっとする新の表情に、ときめいて仕方がない。
最初のコメントを投稿しよう!