第12話

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「そういえば俺、初めて新の部屋に泊まった時もベッドから落ちかけたよな」  そう言った途端、新の顔から表情が消える。  間を置いて「うん」と答える声も、どこか後ろめたさを感じる。 (もしかして新、気にしてんのかな)  スルーしようかと迷って、理宇は敢えて話題にする方を選んだ。 「あの時さ、新寝ぼけて俺を誰かと間違えただろ。急に抱き締められたからすっごい焦ったんだからな」  自分が気にしていないことをアピールした方が、新は気に病まないはず。そう思ってからかう笑顔で軽く告げた。  すると、新が突然飛び起きる。 「違う。そうじゃなくて、あれは……」  新の勢いに驚いて、理宇も身体を起こす。  新はきちんと理宇に向き合って、だけどひどく言いづらそうにぼそぼそと続けた。 「俺、理宇のこと……その、理宇としたいこととかを数えきれないくらい妄想してて、夢とかもしょっちゅう見てて……」  言葉を重ねる度に、新の耳が赤くなっていく。 「妄想……」  理宇はぽかんとして、新が言った単語をオウム返しした。
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