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「だから、あの時は寝ぼけてて、いつもの夢かと思って。本物の理宇だって気付いた瞬間びっくりした」
新は「ごめん、ひいた?」と恐るおそる尋ねてくる。理宇が何も言わないでいると、その表情はさらに不安そうに変わる。
理宇は質問に答えないまま、「ちょっともう一回横になって」と指示をした。
「え?」
「いいから」
有無を言わせない理宇に、新はただ従う。
横寝になった新の左腕を掴んでまっすぐに伸ばさせると、理宇はその腕を下敷きにする形で自分も身体を横たえた。
新に背を向け、もぞもぞと体勢を整えると、前を向いたまま「どうぞ」と一言告げる。
「理宇?」
戸惑う新の声に、理宇は振り向かないまま口を開いた。
「したいこと、もういくらでもできるじゃん。妄想とか、夢の中じゃなくても」
そう言った理宇の耳も首筋も、さっきの新に負けないくらい赤くなっていた。
「てっきり今カノとか元カノと間違えられたと思ってた……なーんだ」
理宇が言いながら安堵と嬉しさを噛みしめていると、背後から新が抱きしめてくる。
「理宇、ありがとう」
「ど、どういたしまして」
背に感じる引き締まった身体の感触に緊張しながらぎこちなく応える。
じっとしていると、言葉にしきれない思いを伝えるみたいに、新が首筋に何度も口づけてくる。
慣れない感触に身を震わせながらも、新の体温に包まれる心地よさに理宇は目を閉じた。
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