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食欲がないわけではないが、未だに夢心地で料理に手を伸ばさずにいると、隣に座る新が自分の分と一緒に、理宇の分も取り分けてくれた。
「角煮も食べる?」
「うん、ありがと」
肉厚な豚バラ肉と、半分に切られた卵から湯気が立ち上っている。息を吹きかけて少し冷ましてから、口に運んだ。
「ん! うま!」
中までしっかりと味が染みこみ、口の中でホロホロと溶けるくらいに柔らかい。
美味しさに感激する理宇を見て、向かい側から一斉に角煮めがけて箸が突き出される。
LiBはもとから上下関係がゆるい職場であるが、美味いものの前では、さらに上司も部下も先輩も後輩も関係なくなる。ちゃっかり一番大きな塊をゲットした竹内が、最後に1つ残った角煮を、「新さんもどうぞ」と皿ごと新へと差し出した。
「理宇、もう1つ食べる?」
「え、いいって。新食べてないじゃん」
理宇へ譲ろうとする新を押しとどめる。
「ほら、いいから食えって」
理宇に勧められた新が、角煮を口に運んだ。顔を綻ばせて「美味しい」と感想を漏らす新に、理宇は「だろ?」と得意げな笑顔を見せる。
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