第12話

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「角煮って家で作るの難しいかな」  煮汁だけになった皿を見つめながら、新が独り言のように呟いた。 「そんなに難しくないと思うけど、煮込むのに時間かかるよ。圧力鍋あったら楽」 「炊飯器でも作れるらしいス! 動画で見たの簡単そうでした」  彩の回答に竹内が付け足す。 「へえ、そうなの。ってか新くん自炊してるんだねぇ。えらいな」  感心する店長に、新は苦笑をこぼして首を横に振った。 「まともにやりだしたのはつい最近なんです。前は全然してませんでした」 「そうなんだ? それはまた何きっかけで?」  新はちらっと理宇を見てから店長に視線を戻す。 「しばらくの間理宇が泊まりにきていたので、せっかくだから何か作ってみようかなと思って」 「あー、そうだったそうだった。理宇ちゃん居候してたんだよね、水漏れで」  店長の言葉に被さって、ジョッキグラスがテーブルを叩く音が響いた。 「それめっちゃわかる! 自分の分だけだと作る気にならないんだよね! 誰かに食べさせる名目じゃないと包丁握ってられないからマジで」  彩の力強い同意に若干気圧されつつも、新が笑顔で頷く。
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