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「角煮って家で作るの難しいかな」
煮汁だけになった皿を見つめながら、新が独り言のように呟いた。
「そんなに難しくないと思うけど、煮込むのに時間かかるよ。圧力鍋あったら楽」
「炊飯器でも作れるらしいス! 動画で見たの簡単そうでした」
彩の回答に竹内が付け足す。
「へえ、そうなの。ってか新くん自炊してるんだねぇ。えらいな」
感心する店長に、新は苦笑をこぼして首を横に振った。
「まともにやりだしたのはつい最近なんです。前は全然してませんでした」
「そうなんだ? それはまた何きっかけで?」
新はちらっと理宇を見てから店長に視線を戻す。
「しばらくの間理宇が泊まりにきていたので、せっかくだから何か作ってみようかなと思って」
「あー、そうだったそうだった。理宇ちゃん居候してたんだよね、水漏れで」
店長の言葉に被さって、ジョッキグラスがテーブルを叩く音が響いた。
「それめっちゃわかる! 自分の分だけだと作る気にならないんだよね! 誰かに食べさせる名目じゃないと包丁握ってられないからマジで」
彩の力強い同意に若干気圧されつつも、新が笑顔で頷く。
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