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「うわ、ごめん、新」
謝罪をして、急いで汚れた箇所におしぼりを押し当てた。
「理宇さん、こすっちゃダメっスよ。汚れ広がるんで。裏側にティッシュとか当てて、表側から叩くといいっス」
竹内のアドバイスに頷き、理宇はすぐさま実行に移す。
「竹内くんって、何気に物知りだよねぇ」
「また動画の情報?」
「これは、ばあちゃんが言ってました。あ、トイレのハンドソープ使うといいかもっス」
「わかった」
即立ち上がった理宇がトイレへと向かおうとすると、新が「俺も行く」と一緒に席を立った。
「どうしよ、落ちるかな」
洗面台の前で羽織っていたシャツを脱ぐ。竹内の教えに従って、備え付けのハンドソープを少量、汚れた場所に垂らした。
「暗い色だから、残っても目立たないよ」
トイレ用の下駄の音をカラコロと響かせて、新がすぐ傍までやってくる。
「いや、絶対ダメだし。新にシミの付いたシャツとか絶対着せたくない。汚れ落ちなかったら弁償する」
無心でトントンと汚れを叩く理宇の背後で、微かな笑い声が聞こえた。
「理宇、自分の服の汚れは全然気にしないのに」
「俺は別にいーの」
隣に新が寄り添ってきて、理宇の手が止まる。
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