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雪哉が切り盛りするバー【ゼニスブルー】を初めて訪れたのは、理宇が就職をした年だった。
新が都内の大学に通い始めて、前よりももっと会いやすくなった。
理宇はまだアシスタントで、仕事としてカットはできないものの、練習モデルとして新のカットやカラーを行っていた。
練習だとしても、新のカットを自分ができることが嬉しくて、何より頻繁に会える理由があることが理宇の仕事の活力にもなった。
その日も閉店後の店内で、ウキウキと新の髪にカラー剤を塗布していた。
この後に予定があると話していた新に、理宇は浮かれた気分で考えなしに尋ねてしまった。
「もしかしてデートか?」
当然のように、「そういうのじゃない」と返ってくると思っていた。だけど少し間を置いて、新が控えめに頷く。
「うん、実は」
一瞬頭が真っ白になって、慌てて笑顔で取り繕った。
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