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「はいはい静粛に~」
パンパンと手を叩いて周囲を黙らせたあと、雪哉はわざとらしい咳払いを一つした。
「こちら、常連のみなさんはイヤってほど名前を聞かされたであろう、噂の新くんです。この度めでたくピンクちゃんのカレシになってご来店ですわ」
雪哉の説明に、二人を取り囲んでいた面々はあんぐりと口を開いて新を凝視し、理宇は肩を跳ねさせた。
「……か、かれし……」
聞こえたばかりの単語を反芻し、ぎくしゃくと雪哉へと振り向く。
「え、なんなんその反応。まさかこの期に及んで違うとか言わへんよな、ピンクちゃん」
雪哉の声音からわずかな怒気を感じ取る。
「ち、ちが……いま、せん」
理宇が途切れ途切れの硬い声で答えた瞬間、店内がどっと雄たけびと喝采で溢れた。
「えぇっ、新くんってアレでしょ? 例の片想いの」
「吐くほどイケメンとか言って、どんだけって思ってたけどガチじゃねえか」
「えっ、すご。ミラクル起きちゃった感じ? やったじゃん」
「ピンちゃん、おめでとさん。何年越しだぁ? まあとにかく良かったなぁ」
歓声に沸く室内に急激に不安になり、理宇は恐るおそる新を見た。
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