第13話

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「はいはい静粛に~」  パンパンと手を叩いて周囲を黙らせたあと、雪哉はわざとらしい咳払いを一つした。 「こちら、常連のみなさんはイヤってほど名前を聞かされたであろう、噂の新くんです。この度めでたくピンクちゃんのカレシになってご来店ですわ」  雪哉の説明に、二人を取り囲んでいた面々はあんぐりと口を開いて新を凝視し、理宇は肩を跳ねさせた。 「……か、かれし……」 聞こえたばかりの単語を反芻し、ぎくしゃくと雪哉へと振り向く。 「え、なんなんその反応。まさかこの期に及んで違うとか言わへんよな、ピンクちゃん」  雪哉の声音からわずかな怒気を感じ取る。 「ち、ちが……いま、せん」  理宇が途切れ途切れの硬い声で答えた瞬間、店内がどっと雄たけびと喝采で溢れた。 「えぇっ、新くんってアレでしょ? 例の片想いの」 「吐くほどイケメンとか言って、どんだけって思ってたけどガチじゃねえか」 「えっ、すご。ミラクル起きちゃった感じ? やったじゃん」 「ピンちゃん、おめでとさん。何年越しだぁ? まあとにかく良かったなぁ」  歓声に沸く室内に急激に不安になり、理宇は恐るおそる新を見た。
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