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「えと……違わない、よな? 彼氏で合ってる?」
眉尻を下げ、自信なさげに確認した声は自然と小さくなって、騒がしい店内では新に届かなかったかもしれない。
理宇がそう心配した矢先、新がふんわり微笑んで、何かを噛みしめるようにゆっくりと頷いた。
理宇たちを取り囲んだ男たちはひとしきり盛り上がったあと、理宇や新に祝福の言葉を掛けたり、握手を求めたりして、最後にはご祝儀だと言ってカウンターに千円札を置いていった。
「理宇、人気者だね」
積み重なったお札を見つめて新が呟く。
「いや、みんな盛り上がるネタに飢えてるだけだって」
「それはなぁ、この数年ピンクちゃんが酔っては愛を叫んどった新くんに、まさか生でご対面できる日が来るとはみんなも思てへんかったやろうしね。テンション爆上がりしてしまうのも仕方ないやろ」
「ちょっ、雪哉くん!」
慌てて制止しようとする理宇を綺麗に無視して、雪哉は新に「何飲む?」と尋ねる。
「すみません、実はバーに来るのは初めてで、カクテルも詳しくなくて……お任せしてもいいですか?」
「もちろん。いつもはどういう系飲んでるん?」
「ハイボールとかレモンサワーが多いです」
「はいはい。さっぱり系やね。ピンクちゃんも同じのでかまへん? 甘いのにする?」
雪哉に訊かれて、理宇は一拍遅れて「一緒ので」と答えた。
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