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◇ ◇ ◇
日付が変わる少し前にゼニスブルーを出て、徒歩で新の自宅へと向かう。今夜はあらかじめ新の部屋に泊まる約束をしていたから、明日の着替えや携帯歯ブラシなどを、普段あまり使わないスポーツバッグに詰めてきていた。
「理宇、酔った?」
無言でゆっくり歩いていたからか、新が心配して顔を覗き込んでくる。
「んー……」
強くないものしか飲んでいないが、たくさん飲んだし、なんだかフワフワしている。だけどそれはアルコールのせいだけじゃない気がした。
大勢の人に祝われて、雪哉に温かい言葉をかけられて、その間ずっと新が隣で微笑んでいて……なんだかずっと夢の中みたいに頼りない感じがする。
理宇の曖昧な返事を肯定と取ったのか、不意に新が足を止めた。
「おんぶしようか?」
「え……」
返事を聞く前に、新は理宇の一歩前に出て屈んだ。
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