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新の背中で唸っていたら、吐息で笑う声が聞こえる。
「嬉しかった、すごく」
「うー……新が喜んでくれたなら、まあ、よしとする」
ぼそぼそとつぶやいたら、その言いざまがうけたのか新が小さく噴き出した。
「でも俺も、すごい嬉しかった。子どもの頃からずっと好きって言ってくれたことも、かっこいいって言ってくれたことも」
顔を見られないですむからか、照れくさい言葉もすんなり口にできた。
一呼吸置いて、新が「うん」と相槌を打つ。
ちゃんと言葉にはできたはずなのに、あの時どれだけの感情が自分の中を駆け巡ったのかを少しも表現できないことにもどかしさを感じた。
「新、大好き……ほんとに好き」
甘苦しくて、勝手に言葉がこぼれる。
「うん、俺も」と聞こえた声は、語尾が掠れていた。
その声も、心なしか高くなった体温も、たまらなく愛しくて、余計に胸が苦しくなった。
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