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マンションの前で新の背中から下りて、自分の足で歩いた。
「ごめん、重かったよな」
「全然平気。理宇軽いから」
ずっとくっついていたから、新の体温が傍にないことがやたらと切なくて落ち着かなくなる。
玄関の扉を解錠した新が、先に理宇に入室を促す。
「はー、ただいま……あ、前の癖で言っちゃった」
お邪魔しますと言い直す前に、扉を閉めた新の手が理宇へと伸びた。それは理宇の肩に掛かっていたショルダーストラップを掴む。
「新?」
理宇の肩からストラップを外して、バッグを床へと下ろす。
向かい合って、正面から見上げた新の瞳は、熱っぽく潤んでいた。
「理宇、ちょっとだけ抱き締めててもいい?」
理宇が返事をするより先に、新の胸の中に閉じ込められる。
焦って反射的に身じろぐ理宇の身体を、新の腕がきつく抱き締めた。
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