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「ごめん、急に……さっきから、ずっとこうしたくて」
理宇の感触を堪能しているみたいに吐き出された深い息が、耳殻を掠めて小さく身震いをした。
「ん、大丈夫……てか、びっくりした。一瞬心読まれたのかと思った」
「え?」
「もうちょっとくっついてたかったなーとか思ってたから」
照れ笑いをしながら、おずおずと新の背中を抱き返した。
だけどすぐに理宇の両肩を掴んだ新が、そっと身体を遠ざけた。
「あ、ごめん……やだった?」
慌てて触れていた手を離そうとしたら、どこか拗ねたような顔をした新が、「嫌なわけないでしょ」と言った。
じっと見つめてくる瞳が少しずつ距離を詰める。左頬にそっと手を添えられて、新の意図を察した。
キスするときは目を閉じる。
覚えたばかりの動作を思い出して、理宇は身を硬くしながらぎゅっと目を瞑った。
「……可愛い」
そんな呟きが聞こえた直後、唇に吐息が触れる。
形を確かめるように指で淵をなぞったあと、柔らかい感触が唇を覆った。
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