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「ン……っ」
理宇の緊張をほぐそうとするかのように、新は繰り返し優しくついばんだ。少し強めに吸われると、湿った粘膜がこすれ合う音が立つ。それはごく静かな音のはずなのに、静かな部屋の中では大きく響いて理宇の羞恥心を煽った。
新はしばらくキスを繰り返したあと、始めた時と同じくゆっくり離れていった。
「ごめん、今日は仕事忙しくて疲れてるのに」
新が申し訳なさそうに顔をしかめる。
「だいじょぶ……平気」
唇から灯された熱に、まだ少しぼんやりしながら答えた。
「理宇は明日も仕事だし、早く寝ないとだね」
髪を撫でてくる手つきが優しくて、もっと触れて欲しいと思った。
「今日も……一緒に寝る?」
理宇の問い掛けに、一瞬新の顔から表情が消える。
「今日はだめ」
きっぱりとした返答に、理宇は軽く目を見開いた。
無意識に肯定の返事を予想していたから、返ってきた言葉に気持ちが沈みかける。
そんな理宇に気付いてか、新が両手で理宇の顔を包んだ。
「一緒に寝たいけど、今夜はゆっくり休んで疲れを取ってほしいから。隣に俺がいると、まだ緊張するでしょ」
柔らかな労りの言葉と眼差しに、下降しかけていた気持ちがすぐさま上を向く。
「まだお酒残ってるだろうし、お風呂じゃなくてシャワーにしておいた方がいいよ。理宇先に浴びて」
優しい声で促されて、理宇は素直に「わかった」と返事をしたのだった。
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