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何度も深呼吸をして無理やり動揺を鎮めた。急いで顔を洗って涙の痕跡を消してからフロアに戻る。
どうにか仕上げて、ヘアセットをして、全開の笑顔で新をデートへと送り出した。
「俺のお陰でイケメン3割増しだから、彼女が惚れ直すこと間違いなし」
そんな理宇の軽口に、新は苦笑していた。
一人きりの店内に戻ると、糸が切れたみたいに床にへたりこんだ。
また少し泣いてから、少しの間虚空を見ていた。
一時間近くそうして、ようやく後片付けに取り掛かった。
明日も朝から仕事だったけど、そのまままっすぐ家に帰る気にはなれなかった。夜中に一人で部屋にいて、今頃彼女と過ごしている新を想像したら、きっと死にたいような気分になる。
少し迷って、スマホを取り出した。しばらくネットをウロウロして、意を決したように駅を目指した。
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