第2話

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 店内は学校の教室くらいの広さで、客はソファ席に2人と、テーブル席に3人。全員が男だった。  何人かに視線を向けられて、反射的に後ずさりをする。 「いらっしゃい。1人? ここどうぞ」  カウンターにいた店主とおぼしき男が、カウンターの座席を指差す。 「あ……はい」  ぎこちなく返事をして、指示された席へ座ると、ステンレス製のトレーに載ったおしぼりが置かれた。 「なに飲む?」  尋ねられてぎくしゃくと見渡すが、メニューらしいものが見当たらない。  勢いで来てしまったが、バーという場所自体、訪れるのは初めてだった。  モノトーンのストライプシャツを着た店主を見て、さりげなく自分の服装をあらためる。  カーキのトラックパンツに、黒のTシャツ。黒だから目立ちにくいが、裾にはカラー剤が付着した痕跡がある。髪色に至っては、数日前に友人の美容師の練習台になったばかりで薄めのピンク色だ。  バーにドレスコードがあるのかどうかは知らないが、こんな身なりで来てはいけなかったのかもしれないと、今さらながら焦る。
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