第2話

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「こういうところ初めて? 別に取って食ったりせえへんから、緊張せんでええよ」  理宇の動揺が伝わったのか、関西なまりの声が掛かる。 「ビールは好き?」 「……あんまり」  気後れしながらも、正直に答える。 「お酒あんま強ない? てか、まだ若そうやもんね」  店主は控えめに笑ってから、「なんか軽くて飲みやすいの作るわ」とグラスを手に取った。  氷を入れて、お酒とソーダを入れて、混ぜる。 それだけのことなのに、洗練された所作は美しかった。 「おいしい」  一口飲んで、思わず呟く。 「そらなによりや」  カシスリキュールを炭酸水で割ったカシスソーダなら、理宇も居酒屋で飲んだことがある。同じもののはずなのに、記憶にある味とは驚くほど差があった。
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