第2話

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「今日はどうしたん? 浮かへん顔してるけど」  その質問に理宇の身体が強張る。  口にしてもいいのだろうか?  ずっとひた隠しにしていたものも、胸の中を渦巻く、自らを押しつぶしそうな激情も。  見定めるように、向かいに立つ男を凝視した。  すると店主は、理宇の警戒を見透かしたように、微笑で首を傾け、優しく促す。  その仕草に背中を押されて、理宇は深呼吸をした。 「好きな相手に……恋人ができて」  強張る唇で、恐るおそる口にする。 「そう、それはしんどいね」  穏やかな店主の声に、ぐっと押し込めていた感情があふれた。 「相手は、お、男で……でも、ずっと、好きで」  声も、手も震えて、視界が白む。  うん、と打たれる相槌の柔らかい響きに、淵に溜まっていた涙がこぼれる。  受け止められている感覚に安堵感がわいた。  次々に流れる雫を拭っていたら、店主が「これ使いや」と手つかずだったおしぼりを勧める。 「鼻水拭いても見逃したるよ」  店主のセリフに少しだけ笑った。  お言葉に甘えて、涙で汚れた顔をタオル生地で拭う。
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