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「失恋したの?」
不意に背後から掛かった声に、びくりと肩が跳ねた。振り向くと、テーブル席にいた男の一人が、グラスを手に近づいてくる。
「実は俺も先月フラれたばっかなんだよね」
有名ブランドのロゴが入ったシャツに、黒のスキニーパンツを着た男は、理宇の隣りのスツールへと腰を下ろす。
「他の女と付き合うんだって。バイとか聞いてねぇし」
どう答えればいいのかわからなくて、黙ったままでいた。
「髪色可愛いね、歳いくつ?」
「21、です」
甘ったるさの中にスパイスがまざった匂いは、男の香水のようだった。
「若っ、どうりでお肌ツルツルなんだ」
そう言って伸ばされた手は、無遠慮に理宇の頬を撫でる。湿った感触に不快感が滲んだ。
「近くで見るとすげぇ可愛いね。よく言われるでしょ?」
「言われたことないです」
「またまたー。めっちゃ可愛いって。俺めちゃくちゃ好みなんだけど」
男は大声で笑ったあと、カウンターに肘をついて頬杖をする。
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