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「ねぇ、フラれた者同士、何かの縁だと思ってさ、俺と新しい恋始めちゃわない?」
「え……」
驚きで理宇が身を引くと、男はその分以上に身体を寄せて距離を詰めた。
「場所変えて2人だけで飲み直そうよ。俺穴場知ってるから」
理宇だけに聞こえる声で囁いて、男はスツールを下りた。
「あとで返事聞かせて」
わざとらしいウインクをして、部屋の隅へと歩いていく。角にある扉の先はトイレのようだった。
「大丈夫?」
呆然と男が置いて行った空のグラスを見つめていると、カウンターから声が掛かる。
「もしも断りづらいんやったら間に入るけど」
男のグラスを回収し、テーブルの上を拭きながら、店主が言った。
黙り込んだ理宇を急かすことなく、店主は悠然と煙草をくわえて火をつける。
吐き出された煙が空気中を漂うのを見つめながら、自分はどうしたいのだろうと理宇は考えた。
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