第2話

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「自分がその気なんやったら、喜んで止めてくれる男は山ほどおると思うよ。すでに一人目が立候補してきたしな」  店主は親指でトントンと煙草の灰を落としてから、また深く吸い込む。 「でも、実際止められるかは別問題や」 「別問題……」 「なあ、ピンクちゃん」  一瞬なんのことかわからず、数秒置いて理宇のことを指しているのだと思い至る。 「モテモテで誠実で優しい新クンよりエエ男が、そう簡単におると思う?」 「……絶対いない」  即座に答えると、店主はにっこりと笑った。 「強引にでも相手作って気持ちを逸らす方法自体はアリやと思うよ。身体の欲求だけでも発散させとくのもな」  きれいな形の唇から飛び出した単語に、理宇は硬直する。  この場所に来ると決めた時点で、そういう行為の可能性は考えていなかったわけじゃない。けれどこうして他人の口から聞くと生々しく思えて、少し冷静になった。
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