第2話

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「失恋してないので」 「え? でもさっき、好きな奴に恋人できたって泣いてたじゃん」 「相手が誰を好きになろうが、俺はずっと好きなので。だから失恋してません」  この男とどうなろうが、新への感情が薄れることはない確信がすでにあった。  それをわかっていて関わりを持つことは、なんの意味もない。  ぶはっ、と笑いを漏らしたのは、理宇でも男でもなく、カウンターから2人を見守っていた店主だった。 「あかんわ、この子手ごわすぎやで。大人しく引いとき」  まだ収まらない笑いを堪えながら、店主が言う。  男は「不毛すぎだろ」と理宇に捨て台詞を吐いて、テーブルへと戻っていった。 「あの、ありがとうございます」  居住まいを正して頭を下げると、「なんもしてへんよ」と返ってくる。 「はーあ、久しぶりにめっちゃ笑ったから、今日は奢りにしとくわ」  店主の申し出に、理宇は目を大きく開く。 「またいつでもおいで。相手の愚痴でも自慢でも、なんでも聞いたげるわ」  店主はそう言ったあと、「あーツボった」と呟いたのだった。
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