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◇ ◇ ◇ ◇
「結局5年も新くん自慢聞かされるハメになるなんてなぁ」
「……お世話になってます」
遠い目で煙草をふかす幸哉に、理宇は深々と頭を下げる。
今思うと、あの時の自分の行動は完全にやけくそだったと言える。だけど、この店を訪れて幸哉に会えたことには心底感謝していた。
新に言えず封じ込めた気持ちを雪哉に聞いてもらうことで、理宇はどうにか自分を保てている。
「爆イケ過ぎてもう無理とか言うから、そろそろ限界来て告る気になったかと思ったのに」
「……それだけはしない。できない」
「けど、新くんもそろそろ結婚とか考え始める歳なんやし、ここらがラストチャンスなんちゃうの?」
雪哉は少し意地悪な表情を浮かべる。
「俺は新が結婚して、子どもが生まれたら、めちゃくちゃ可愛がるって決めてるし」
自分に言い聞かせるように眉間にしわを寄せて呟く。
――理宇、実は俺、結婚することに決めたんだ。
それを急に言われたら、きっとまたパニックを起こしてしまうことを見越して、すでにシミュレーションして心の準備を始めている。
未だに準備は整わないままだけど。
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