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想像で涙目になる理宇に、幸哉の顔が試すような笑顔から、労わるような苦笑に変わる。
「ピンクちゃんは、変わらんなぁ」
5年前と違い、現在の理宇の髪色はアッシュ強めのブラウンだ。服装は相変わらず自転車通勤を考慮してスポーツミックスが多いけど、日によってはジャケットなんかを着ることもある。
だけど理宇の髪が青になろうが金になろうが、どれだけ服装が大人っぽくなろうが、雪哉はずっと「ピンクちゃん」と呼び続けた。
そして、初対面で二十代後半に見えた雪哉は何年経っても見た目が変わらない。訊けば毎回「27歳」と答えるので、本当の年齢は未だに知らない。
「いや、さらに重症化して、すでに健気を通り越してドMやんな」
「ドMじゃないよ。……普通に痛い」
好きすぎて苦しいし、嫉妬や焦燥でおかしくなりそうになることもある。
刹那的に全部忘れたいと願うことだって。
それでも自分を変えようとは思わない。
自分の感情を封じ込めて、新が居心地のいい場所を作ることに徹する。
それが、理宇なりの愛し方だった。
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