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その日、新の帰宅は23時を過ぎて、やっぱり昨日はかなり無理をしてくれたのだと申し訳ない気持ちで出迎えた。
「大丈夫、来週半ばにはやっと忙しいの落ち着く予定だから」
心配する理宇に気丈に笑う顔を見つめていると、もやもやと後悔が満ちてくる。
やっぱりあのグラスを買えばよかった。
代用品でも、理宇が気持ちを込めたものならば、新は少しでも喜んでくれたかもしれない。元気が出たかもしれない。
己の無力さを感じながら、理宇はソファに座る新の頭を胸に抱え込むように引き寄せた。
「理宇、急にどうしたの?」
不思議そうに尋ねる声を封じ込めるように腕を強くする。
「こうやったら俺の元気とか色々分けられたらいいのにって思って」
新は吐息で笑いながら、理宇の背を抱き返してきた。
「ありがとう。お言葉に甘えて充電させてもらう」
理宇を抱き上げて、そのまま向かい合う形で膝の上にのせる。
「こんなんで充電できてる?」
「うん、生き返る」
甘えるように理宇の鎖骨の上辺りに額を擦り付けてくる仕草が可愛くて、「大げさ」と笑いながら頭に手を伸ばした。
ゆったりと髪を撫でると、もっとと催促するみたいに腰をしっかりと抱き込まれて、愛しさで胸が甘く痛んだ。
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