第3話

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 別腹ってなんだと思いながら再びカメラを向けようとすると、理宇の横にもう一台スマホが突き出された。  スマホを持つ腕は逞しく、着ている半袖シャツがぴっちりと身体に張り付いている。 「え、店長もですか?」 「美しいものを撮りたくなるのは人間の性だよ、理宇ちゃん」  わかるようなわからないようなことを言って、トレードマークであるハーフリムのメガネを指で押し上げる。 「なんですか、それ」  呆れた風に溜息を吐いて見せたが、内心は周囲の同僚たちには激しい同意しかない。  スーツ姿も良いけれど、私服もカッコよ過ぎだし、目の保養過ぎだし、10枚でも100枚でもシャッターを切りたくなる。  みんなが撮影しやすいよう、律儀にも無表情でじっとしている姿にキュンとする。  本当は誰よりも叫び出したい気持を抑え込みながら、平気な顔をして撮影を続けた。  今夜はこのあと新と夕食を食べる予定だ。流れで同僚たちもついてきそうな予感もするけど、別にそれでも構わない。新と一緒にいられるだけで十分に嬉しい。
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