第3話

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  ◇  ◇  ◇ 「うっわ……マジか……」  自宅の部屋の惨状を目にして、そう呟いたきりしばらく言葉が出てこなくなる。  ワンルームの大して広くはない空間。その一面が余すところなく水浸しになっていた。ベッドも、ソファも、TVもレンジも。  被害をまぬがれたものを探して、避難させて……という思考すら湧かない程度にはひどい有様だ。 「ご迷惑をおかけし申し訳ございません」  電話を掛けてきた管理会社の男は、理宇が帰宅するとすでに部屋の前で待っていた。マンションの大家だというおじいさんの姿もあったが、挨拶だけしてすぐに上の階の確認に行ってしまった。 「現在上の部屋で業者が調査と対処を行っている途中ですが、恐らく給水管になんらかの不具合が生じたと思われます。上階にお住いの方は先週から長期出張に出られておりまして、水の使用はございませんでした」  男が説明している間にも、天井からはダラダラと水が垂れ続けている。まだ止められてはいない様子だ。 「まだ確認中で定かではありませんが、すでにここまで被害が及んでいるとなると、恐らく壁や床の張り替えが必要になってくるかと思われます」 「それって……しばらくはここに住めないってことですかね?」  恐るおそる尋ねると、男は再び「申し訳ございません」とスーツの腰を折った。
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