第1部 第1話

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 新が大学生の頃は、カラーやカットで遊びの要素を入れ、あらゆるバリエーションを楽しんだ。だけど社会人になればそれも難しい。 「新が社会人になって、ビジネス向けのヘアカット載せてから、ビジネスマンのお客様あからさまに増えたし」 「本当? ちゃんと貢献できてるならいいんだけど」  社会人2年目の律儀な幼馴染は、安心したように控えめに笑った。 「それにやっぱり、新はシンプルなのがいいよ。骨格だけじゃなくて耳の形もきれいだし、襟足すっきり浅めのツーブロがマストだな」  少し伸びて耳の上部を隠していた髪を撫で上げて、耳の裏側に隠す。 「ありがとう。理宇のカットとか、いい感じだっていつも会社や取引先の人に褒められる」 「ふふん、当ったり前。じゃ、切ってくから。夏用にちょい短めな」 「よろしくお願いします」 「おう、任せとけ」  ブロッキングして、シザーで髪を切り落としていく。  神経が通っていないとはいえ、人の身体の一部を切ったり染めたりするのは、やっぱり責任重大だと改めて思う。  長さを整えて、梳いて、20分ほどでカットを終えた。
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