第1部 第1話

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「寝たらごめん」  シャンプー台に移動して、チェアを倒す。見上げてくる新を覗き込むと、「理宇のシャンプー気持ちいいから」と笑う。 「よし、30秒で落としてやる」  得意げに笑って、フェイスガーゼで新の顔を覆う。 「サービスでヘッドスパしてやろう」  濡らした髪に泡のフォームをつけて、頭皮を揉み込んでいく。 「あー、だめ、気持ちいい……」  唸る新に手技にも力が入る。  髪を乾かしたあと微調整して、ワックスをもみ込み動きをつける。 「うん、まごうことなき爆イケ。さすが俺」  仕上がりを確認して、新の肩を叩く。「お疲れ様でした」と、クロスを外すと、新は「理宇こそお疲れ様」と労った。  すでに店の最終受付時間を過ぎていて、フロア内に他のお客はいない。  受付カウンターの手前、店のロゴのプレートが飾られた壁まで移動して、写真を撮る。  引きで。アップで。横から、後ろから。  もう何度もしているから、新も慣れたものだ。
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