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うまく呼吸ができなくて、酸欠になりそうになった時、不意に新の身体がビクっと大きく跳ねる。
直後唐突に腕が離れて、勢いよく新が身体を起こした。
理宇は抱き締められていた体勢のまま、呆然と新を見上げる。
新はさらに驚いたように、目を大きく開いて理宇を凝視した。
「ごめん、思い切り寝ぼけてた」
新は焦ったみたいに、乱れた髪をくしゃくしゃと掻く。
「あ、っと……全然、大丈夫。俺も、半分寝てたし」
どうにか返答を繕いながら、理宇も身体を起こした。
「なんか、目ぇ覚めたから、もう起きとこっかな。……あ、トイレ借りるな」
新の顔を確認できないままベッドを下りて、トイレへ向かう。
身体に力が入らなくて、足元がおぼつかなかった。
トイレに入って、ドアを施錠して、そのままズルズルとしゃがみ込んだ。
まだ身体中のあらゆる場所に、新の感触が残っている。
理宇よりずっと大きく、鍛え上げられた肉体。
鼓動はまだ早鐘を打っていて、落ち着く様子もない。
「初っ端からこんなで、どうなっちゃうんだよ、俺……」
膝を抱えて、ごく小さい声で呟く。
胸の中の台風のような心境を叫べない代わりに、理宇は盛大な溜息を吐いたのだった。
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