第4話

19/19
前へ
/416ページ
次へ
 うまく呼吸ができなくて、酸欠になりそうになった時、不意に新の身体がビクっと大きく跳ねる。  直後唐突に腕が離れて、勢いよく新が身体を起こした。  理宇は抱き締められていた体勢のまま、呆然と新を見上げる。  新はさらに驚いたように、目を大きく開いて理宇を凝視した。 「ごめん、思い切り寝ぼけてた」  新は焦ったみたいに、乱れた髪をくしゃくしゃと掻く。 「あ、っと……全然、大丈夫。俺も、半分寝てたし」  どうにか返答を繕いながら、理宇も身体を起こした。 「なんか、目ぇ覚めたから、もう起きとこっかな。……あ、トイレ借りるな」  新の顔を確認できないままベッドを下りて、トイレへ向かう。  身体に力が入らなくて、足元がおぼつかなかった。  トイレに入って、ドアを施錠して、そのままズルズルとしゃがみ込んだ。  まだ身体中のあらゆる場所に、新の感触が残っている。  理宇よりずっと大きく、鍛え上げられた肉体。  鼓動はまだ早鐘を打っていて、落ち着く様子もない。 「初っ端からこんなで、どうなっちゃうんだよ、俺……」  膝を抱えて、ごく小さい声で呟く。  胸の中の台風のような心境を叫べない代わりに、理宇は盛大な溜息を吐いたのだった。
/416ページ

最初のコメントを投稿しよう!

715人が本棚に入れています
本棚に追加