第5話

3/21
前へ
/416ページ
次へ
「もしかしたら、新くんもピンクちゃんのことが好きで、どさくさに紛れてギューしたのかもしれへんなぁ?」  意味深な笑顔を寄せてくる雪哉に、理宇は盛大な溜息を吐いた。 「それは絶対ない。大体、あれは寝ぼけてただけだから」 「そんなんわからへんやん」 「新は嘘とかつかないし。っていうか、起きて相手が俺だって気づいた瞬間、思いっきり「間違えた」って顔してたから」  それがあったから、理宇はベッドから逃げたトイレの中で、比較的すぐに平静に戻ったのだ。 「あーらら。誰と間違えたんやろな?」 「……う」  胸に込み上げる苦いものを誤魔化すように、紅茶に似た味わいの液体を呷る。 「具体的に想像しないようにしてるから、それ以上言わないで」  グラスの半分程を飲んで、盛大な溜息を吐いた。
/416ページ

最初のコメントを投稿しよう!

715人が本棚に入れています
本棚に追加