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「スーツもしっくりくるようになったよな」
「最初は似合ってなかった?」
「いや、似合ってるけど、なんていうの、リクルート感全開っていうか」
「それはそうかも」
「今はすっかり、バリバリ働く男って感じ」
新は黙り込み、何か言いたげに理宇を見てくる。
「あー、照れてる照れてる」
「……なんか、普通に嬉しいから」
はにかむ表情に、今度は理宇の方が黙り込んだ。
「あ、そだ。今度はオフのアレンジ撮りたいから土日に私服で来てよ。貴重なオフタイム潰させるお礼はちゃんとするからさ」
「お礼とか、別にいらない」
「遠慮すんなよ」
「遠慮じゃなくて、理宇と会うのを時間潰れたとか思わないから」
さっきの女性客のように、同僚のように、理宇の時間が止まる。
「理宇?」
「え? あはは、可愛いこと言ってくれるじゃん。そういう良い子には、豪華ディナーをおごってやろう」
「夕飯は食べたいけど、割り勘でいい。ただで髪切ってもらってるんだから、本当にお礼とか……」
「お礼じゃなくて、嬉しいからご馳走したいの」
そう言ったら、新は目を細めて、「ありがとう」と言った。
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