第1部 第1話

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「スーツもしっくりくるようになったよな」 「最初は似合ってなかった?」 「いや、似合ってるけど、なんていうの、リクルート感全開っていうか」 「それはそうかも」 「今はすっかり、バリバリ働く男って感じ」  新は黙り込み、何か言いたげに理宇を見てくる。 「あー、照れてる照れてる」 「……なんか、普通に嬉しいから」  はにかむ表情に、今度は理宇の方が黙り込んだ。 「あ、そだ。今度はオフのアレンジ撮りたいから土日に私服で来てよ。貴重なオフタイム潰させるお礼はちゃんとするからさ」 「お礼とか、別にいらない」 「遠慮すんなよ」 「遠慮じゃなくて、理宇と会うのを時間潰れたとか思わないから」  さっきの女性客のように、同僚のように、理宇の時間が止まる。 「理宇?」 「え? あはは、可愛いこと言ってくれるじゃん。そういう良い子には、豪華ディナーをおごってやろう」 「夕飯は食べたいけど、割り勘でいい。ただで髪切ってもらってるんだから、本当にお礼とか……」 「お礼じゃなくて、嬉しいからご馳走したいの」  そう言ったら、新は目を細めて、「ありがとう」と言った。
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