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そんな時、店のドアが開いて男が2人入ってくる。理宇も顔見知りの常連客は、「おっす」と陽気にカウンターに向かって手をあげてから奥のソファ席に慣れた様子で向かう。2人が取りあえずビール派だと心得ている雪哉は、オーダーも聞かずグラスを取り出して準備を始めた。
「ま、秘密にして耐え忍ぶんでも、ええ機会や思ってぶち当たってみるにしても、どっちが正解ってことはあらへんよ。結局決めるのは自分自身やしな」
傾けたグラスに黄金色の液体が注がれていく。
雪哉は頂点にふんわりとした白い泡が浮かんだビールを2つ完成させると、おしぼりと一緒にトレーに載せた。
「どっちを選んでどうなっても話は聞いたるから」
「雪哉くん……」
「せいぜいドッキドキ同棲ライフを楽しんどき」
トレーを手にカウンターから出ていく雪哉の背を見つめながら、「だから、同棲じゃないって」と呟いた。
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