第5話

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 新は小さい頃から、優しすぎるからこそ、自分の言葉をたくさん飲み込んで、我慢してしまうところがあった。  そんな意地らしさに気付くたび、理宇は堪らない気持ちになる。  理宇が話さないことを、寂しいと言ってくれることが、やきもちのような感情を抱いてくれることが嬉しかった。  もう無理。ほんとに好き。  気付いたら豚まんを置いて、新の正面に立っていた。  見上げてくる新の顔を、自分の胸の辺りに押し付けるように抱き締める。幼い頃、愛しさのまま何度もそうしたみたいに。  新は抗うことなく理宇の抱擁を受け入れた。 「俺、頼りない上に、面倒くさいこと言ってごめん」  くぐもった新の声が聞こえた。 「全然面倒くさくないし」  遠慮がちに理宇の腰に腕を回して抱き返してくる新に、可愛さで眩暈を起こしそうになりながら頭を撫でる。
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