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結局は自分のことしか考えていない。
わがままで、ほんとにごめん。
でも、絶対に失くしたくないんだ、この場所を。
心の中でもう一度謝って、新の身体をそっと離した。
「俺の愚痴って、常連のお客さんが未だに俺の名前間違えてくるとか、店長がスタッフルームにどんどん筋トレグッズ増やすのいい加減にしてほしいとか、ほんとーにしょうもない話ばっかりなんだけど」
神妙な面持ちで告げたら、新は小さく噴き出して、「大歓迎」と答えた。
「じゃあこれからは、愚痴は新に聞いてもらおっかな」
「うん、なんでも話して」
屈託のない新の笑顔に、「なんでも」は話せない申し訳なさが少し疼く。
「……てか、ごめん。食べてる途中だったのに、なんか、つい……」
意地らしい新の態度に昔の記憶が重なって、そこに愛しさが乗っかって、咄嗟に行動してしまった。
新を抱き締めるなんて大胆なことをしでかしてしまった自分を思い返し、今になって猛烈に恥ずかしくなる。
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