第6話

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 ゆっくり話していたら、いつの間にか8時を回っていて、新がいつもより慌ただしく残りの身支度を済ませる。 「そうだ理宇、今日は何時に帰ってくる?」 「えーと、今日は早くて20時半……飛び込みのお客さん来たらもうちょっと遅くなるかも」  本日の指名予約を思い出しながら答える。 「あ、晩飯、先に食べててな」  新の定時は18時だ。理宇の都合で待たせるわけにはいかない。  だけど新は、理宇のセリフに「わかった」とは答えなかった。 「一緒に食べたいから、待ってる」 「……っ」  朝から殺傷能力抜群のキラキラ笑顔を正面から受け、理宇は堪らずに息を詰め、きつく目を瞑ってどうにか自分を保った。 「……じゃあ、なるべく早く帰るな」  そう言ったら、新は眩しい笑顔のまま、今度は「うん」と頷いた。
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