第6話

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 理宇が勤める【LiB】は、従業員にとってかなりホワイトな職場だ。  正直、ヘアサロンはどこも労働基準法があってないようなものだったりする。休みが少ない上に、長時間労働が基本で、休憩が取れないことも多い。残業代が出ないところもザラ。加えて薄給。離職率が高いのも頷ける過酷な職種だ。  理宇も、専学時代の友人からの愚痴でその実情を知っていたが、LiBに関してはそれが当てはまらない。  オーナー兼店長である白崎が、独立する前に勤めていた大手サロンが、典型的なそれだったらしい。加えてパワハラや派閥争いが横行し、心を病んでしまったと聞いたことがある。  美容師が心豊かに健康な状態でいてこそ、お客に最高の施術や接客ができるはずだと確信した店長は、お客だけではなくスタッフにも優しい店づくりを目指した。  お陰で理宇たちスタッフの年間休日は、他のサロンの美容師が目を剥くほど多い。  閉店後のアシスタントの研修は、基本的に店長が担当するため、理宇たちスタイリストに振られることもない。なので、受け持つお客の施術が終われば、帰宅を許されていた。
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