第6話

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  ◇  ◇  ◇  予兆もなしに唐突に振り出した雨が、帰宅途中の理宇の身体を激しく打つ。  新の家まではもう少しだから、このまま突っ切ってしまおう。……その判断は誤りだったかもしれないとすぐに後悔した。  何もこんなに降らなくても!  ってか降るのあと5分待ってよ!  自然現象に文句をつけながらペダルを漕ぐ足を速めるが、大きな水の粒は一瞬で理宇の髪も衣服もじっとりと濡らす。  先日の自宅の水漏れといい、最近の自分は水難の相でも出ているのかもしれない、と理宇は思った。  新のマンションに到着する頃には、もう衣服どころかパンツまで濡れていた。  いつものように合鍵で入り口を抜けて、部屋の前でインターホンを押す。  しかし反応がないので部屋の扉も合鍵で解錠した。  照明が自動点灯した玄関には、新の靴はない。  今夜新は残業で、帰宅は理宇と同じくらいになると朝に話していた。  理宇が店を出る前は、まだ帰宅の連絡も来ていなかった。
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